2026.08.31

フェス事業の紹介——好きの恩返し

取材:秋葉絢夏(デザインスタジオ・エル)
写真:内山温那
文:秋葉絢夏(デザインスタジオ・エル)

アニエラのフェス事業では、長野最大級のアニソン野外フェスとして知られる「ナガノアニエラフェスタ」の運営を行っています。「好きの恩返し」をコンセプトとするフェス事業について、仕事内容やメンバーの想いを聞きました。

祐川(すけかわ)

2025年にアニエラへ入社。もともと一人のファンとして「ナガノアニエラフェスタ」に参加していた。

コバヤシリョウ

アニエラ代表。アニメソングDJとしての経験と「都心に行かなくても楽しめるアニメイベントをつくりたい」という想いから「ナガノアニエラフェスタ」を開催。

フェスのお仕事

アニエラのフェス事業ではどんなことをしているのか、改めて教えていただけますか。

コバヤシ

フェス事業としては、創業当時の2017年から例年9月に「ナガノアニエラフェスタ」というアニソンの野外フェスを開催しています。

フェス自体は9月ということですが、やはり年間を通して準備など行われているんでしょうか。

コバヤシ

そうですね。本当に年間を通して何かしら動いています。オンシーズンというか、忙しくなり出すのは春ぐらいかな。

祐川

そうですね。半年前ぐらいから徐々に忙しくなってきますね。

コバヤシ

うん。開催発表の直前くらいからだいぶ忙しくなってきます。発表前に制作チーム側のホテルを確保する必要があったりして、そのあたりからいろいろとドタバタしてくる感じですね。

フェスのチームは、コバヤシさんと祐川さんを含め、アニエラの皆さんで構成されているんですか?

コバヤシ

いや、基本的にアニエラ社内のメンバーは僕と祐川の二人で、あとはイベントの設営や飲食などを専門とする地域の会社さんなどに加わっていただいて「制作委員会」というかたちで進めています。
ただ、アニエラ社内でも、リユース事業を担当している専務の小林巧が物販まわりを担当したりはしています。

地域の方など、社外の方々と一緒につくられているんですね。

コバヤシ

そうです。一社だけでなく、いろんな人たちが委員会として協力している点では、地域のお祭のイメージに近いんじゃないかと思います。長野でいうところの「長野びんずる」とか「松本ぼんぼん」みたいな。

アニエラフェスタも、すっかり恒例のお祭ですもんね。

コバヤシ

皆さんのおかげで、こうして続けられているのがありがたいなと思います。

出演者はどう決まる?

フェスといえば、お客さんにとっても「今年は誰が出るんだろう」というのが楽しみなところかと思うんですが、出演するアーティストさんはどのようにして決定されていくんでしょうか。

コバヤシ

まずは、今年出てほしいアーティストさんをチームのみんなでバーッと出し合って、そこに挙がったアーティストの皆さんに次々にお声がけをしていって、ご都合よくスケジュールを調整できた方から決定していく感じですね。

アニエラフェスタでは、出演者の公募もされていますよね。フェスに出たい方が自ら応募できるチャンスがあるというのは夢のある企画だなと思うのですが、この公募はいつから始められたのでしょうか?

コバヤシ

2019年にDJを公募したのが最初ですね。近年ではDJ枠に加えて、ライブパフォーマンスをするアーティスト枠、さらにバーチャルアーティスト枠も募集しています。

バーチャル枠まであるということで、長野県内に限らずいろんな地域から応募があるのでしょうか。

コバヤシ

そうですね。事務所に所属しているプロの方からアマチュアの方まで、本当に幅広い方々が応募してくださってますね。

アマチュアの方にもチャンスがあるということで、アニエラフェスタをきっかけに活躍の場が広がる方も出てきそうですね!

「好きの恩返し」に込める想い

フェス事業では「好きの恩返し」をコンセプトとされていますが、「恩返し」に込める想いや、この事業で大切にしている考えをお聞かせいただけますか。

コバヤシ

リユース事業をはじめとする僕たちのビジネスは、アニメなどのポップカルチャーをつくる人たちや、それを楽しむ人たちがいるおかげで成り立っているという考えと、感謝の気持ちがやっぱりあるんです。なので、作り手もファンも集まれるフェスというかたちで、このカルチャーをもっと盛り上げる一助になることで、恩返しがしたいと思っています。

祐川

フェスにしても、音楽を作ってくれる人やそれを歌ってくれる人、それを聴く人がいないと成立しないものなので、やっぱりそこに対するリスペクトは忘れずに、来年の10周年、さらにその先に向けて、一つひとつのイベントをいいものにしていければなと思っております。

アニエラさんの感謝と敬意は、フェスというイベントを通してきっとアーティストの皆さんやファンの皆さんにも伝わっているんだろうなと思います。

フェスで生まれたつながり・広がり

アニエラのビジョンは「ポップカルチャーハブ」ということで、フェスを通してつながりを感じられたエピソードや、印象に残っているお話はありますか ?

コバヤシ

知らないアーティストだったけど、フェスで出会って気になって、ワンマンライブに遊びに行ってファンになったっていうお客さんの話を聞くと、やっぱりすごく嬉しいし、ポップカルチャーハブだなと思いますね。

祐川

僕自身、アニエラに入社する前は一人のファンとしてアニエラフェスタに参加していたんですけど、アニエラフェスタで初めてバーチャルアーティストさんのライブを目の前で見て、歌声とかパフォーマンスに魅了されて、それまでバーチャルアーティストさんに詳しくなかったけど興味が出て詳しくなって……ということがありました。アニエラフェスタで好きになった曲も、多すぎて覚えていないくらいあります。

コバヤシ

あとは、アーティストさん同士でも、フェスで共演したことがきっかけで対バンライブをしたり、ラジオ番組にゲスト出演してフェスでの思い出エピソードを話したり、といったつながりが生まれているみたいです。

祐川

アニエラフェスタで共演した方同士で、その後に新しい曲を一緒に作られたということもありましたね。
あと、僕は野外フェスっていうのがすごく好きなんですが、その中でもアニエラフェスタは、アニソンライブシーンの中で数少ない野外フェスとして、もともとすごく興味があったんです。やっぱり、野外イベントは屋内イベントと比べると開催のハードルがすごく高いこともあって、なかなか野外のアニソンフェスって少ないんですよ。なので、屋内イベントしか行ったことのないお客さんがアニエラフェスタを通して「外で音楽聴くのってこんなに楽しいんだ」とか、ライブの楽しみを広げるきっかけにもなったら嬉しいなと思います。

知らなかったアーティストを好きになったり、アーティストさん同士の新しいご縁につながったり、フェスの楽しみ方が広がったりと、アニエラフェスタが「ポップカルチャーハブ」を体現する場所となっていることが伝わります。

少しずつ築いてきた、地域との関係性

祐川さんはもともとお客さんとしてアニエラフェスタに参加していたということですが、フェスを主催する側になって初めて気づいたことや、思ったことはありますか ?

祐川

まず、アニエラフェスタは会場として佐久市の場所を借りているので、行政の皆さんのご協力が欠かせないものなんですが、その行政の皆さんがこのイベントに対してすごく協力的でいてくださることにびっくりしました。制作委員会に加わっている他社さんや、ボランティアスタッフさんなど、本当にいろんな方々の協力があってつくられているイベントなんだということは、運営側になってから気づいたことでしたね。

フェス2年目にあたる2018年から佐久市での開催が続いていますが、行政の皆さんからは最初から前向きにご協力いただけていたんでしょうか ?

コバヤシ

いや、最初は警戒もされていたと思います(笑)。これは後から聞いた話なんですが、「まちを盛り上げるからお金出してください」とか、行政に対してそういうアプローチを仕掛ける若い人が結構いるみたいで。僕が初めて佐久市に相談したときは30代はじめくらいだったので、「そういう話をしに来た若い人」という見られ方で、やっぱり初めから信頼はされていなかったと思います。あと、佐久で初めて開催した年とかは住民の皆さんの理解もまだまだ得られてない状況だったので、音に対するクレームが行政のほうに届いてしまったこともありました。最初はそんな感じだったんですが、毎年、荒天やコロナといったいろんな困難もあった中、行政の皆さんとも協力しながら月日を重ねてきたことで、徐々に今の信頼関係や協力体制を築けてきた感覚がありますね。

祐川

僕がアニエラに入った1年前には、すでに協力体制も地域の住民の方の理解も得られてきた状況だったんですが、それも今まで積み上げられてきたことの成果なんだなと思います。

今、行政の方や地域にお住まいの方からは、フェスについてどんな反応が寄せられますか。

コバヤシ

行政の方からは、佐久に若い人たちを集めてくれる、若い人たちに佐久市を知ってもらう機会をつくってくれてるイベントとして、すごく前向きな反応をいただけています。市として、なかなか若い世代を集められないことに課題を感じていることもあり、「今後も佐久でやってほしい」というお声をいただきます。

アニエラフェスタの1日、2日だけでもまちに若い人たちが集まって盛り上がるというのは、行政の方にとっても嬉しいことなんでしょうね。

コバヤシ

まちの居酒屋とかも、フェスの日はちょっと遅くまでやってくれたり。ホテルとか飲食とかの経済効果もあるみたいで。

祐川

そうですね。ありがたい話です。

近隣のお店とも、事前にフェスのスケジュールを共有されているんですか?

コバヤシ

いや、そこまではやってないですけど、大体みんな「この日はイベントあるんだな」って知って、お店側の判断で営業時間を延長してくれてるような感じです。で、毎年アニエラフェスタに来てくれてるお客さんの中には、「年に1回、フェスの帰りはその店に行く」って決めてる人もいて、店主とも顔馴染みになって、みたいな話も聞いたりします。

フェスをきっかけに、離れた地で「行きつけ」ができるって素敵ですね。

コバヤシ

いいですよね。なんか面白いですよね。

「アニソンフェス」にとどまらない、「ポップカルチャーのお祭り」

祐川さんは野外フェスがお好きだということで、いろんなフェスに行かれたご経験あると思うんですが、中でもアニエラフェスタの魅力はどんなところに感じましたか ?

祐川

アニエラフェスタについて、最初に行くまでは「アニソンのイベント」くらいの認識だったんですけど、いざ参加してみるとアニソンに限らずいろんなジャンルのアーティストが出演していて、いい意味で「ごちゃ混ぜなフェス」だなと思いました。歌うだけじゃなくってDJのパフォーマンスがあったり、バーチャルアーティストが出演してたり。DJ 、アーティスト、バーチャルアーティストそれぞれのファンって、アニメやポップカルチャーというジャンルは同じでも、なんていうんですかね……チャンネルがちょっとずれてるというか、それぞれが交わりそうで交わらないファン層だと思うんです。そんないろんなファン層の人たちが1つの場所に集まって、垣根を越えてみんなで盛り上がる空間であることが、すごく僕の中で印象に残ったイベントでした。

アニエラフェスタの説明としては「アニソンのフェス」っていうのがわかりやすいワードではありますけど、実際に参加してみると、アニソンだけに限らない、パフォーマンスも歌だけに限らない、まさに「ポップカルチャーのお祭り」のような場所なんでしょうね。

祐川

本当に、おっしゃっていただいた通りだと思います。

フェスは雨でも楽しめる

野外フェスといえば、どうしても当日までお天気がわからないという部分で、ファンの方もですが、運営される方の緊張たるや……と思います。

コバヤシ

もう慣れましたね。雨は降るもんだと思ってますから(笑)。

9月は台風の多い時期だったりしますもんね。

祐川

お客さん側も「雨が降って当たり前」みたいに思っていて、レインウェアとかも揃えたうえで、雨が降ったときなりの楽しみ方をしていますね。もう本当に、お客さんが強いです(笑)。

この仕事の楽しいところ

フェスを運営する側のお二人が、このお仕事で楽しいと思うところを教えてください。

コバヤシ

僕はシンプルに、当日を迎えたときが楽しいですね。当日を迎えるまでは準備も大変だし、天気とか心配なことも多いし、本当にしんどいんですけど、やっぱり当日を迎えて、みんなが楽しそうにしていて笑顔が溢れているのを見ると、それまでのしんどさも全部吹き飛ぶ感じがしますね。

祐川

準備はやっぱり大変ですね。ただその中でも、開催が近づくにつれて「アニエラフェスタの予定入れた」「チケット買いました」といった反応がSNSで見られたり、出演アーティストさんからコメントがあったりして、皆さんが楽しみにしている様子や意気込みを感じられると、「当日まで頑張らないと」って思いますね。あとはもう、当日の楽しさは言わずもがなです。イベントが終わった後にみんなで集まって乾杯するっていう、そこの瞬間を目標にやっているってとこですかね。

コバヤシ

そうだね。

無事に終えた後の一杯は、さぞおいしいでしょうね!

この仕事の難しいところ

準備はすごく大変ということですが、例えばどんなことが大変だったり、難しかったりしますか?

コバヤシ

お客さんとアーティストさんが全力で楽しめるように、いかにホスピタリティを高められるかというのが、毎年の課題ですね。例えば、野外フェスでは会場の収容人数に明確な上限がないんですが、来場者数に対して電車や駐車場、宿泊施設のキャパシティが不足すると、お客さんは快適に過ごせなくなってしまいます。多くの方にご来場いただきながら、皆さんが快適に過ごせる受け入れ態勢を整えるには、やはり行政やさまざまな企業のお力を借りる必要があるので、地域のご協力もいただきながら考え続けているところです。アーティストさんに関しては、皆さんが全力でパフォーマンスできる環境を整えるまでが僕らにできることだと思っているので、いかに気持ちよくステージに上がっていただけるかを毎年考えています。

祐川

言いたいことは代表が大体言ってくれたんですが(笑)、アーティストさんとお客さんにどれだけ快適にイベントの2日間を過ごしてもらえるかに尽きますね。ありがたいことに年々お客さんが増えている中で生じる課題もあるので、去年とは違う新しい試みも必要で。例えば、会場の人が増えて音が聴こえにくいエリアができ始めたらスピーカーを増やそうってなったり、シャトルバスの本数を増やしたいってなったり。機材を増やすとなると物理的に可能かどうかの検討が必要ですし、バスを増やすってなったらさまざまなコストやリスクも考慮する必要があるので、関わる企業の皆さんと相談しながら頭を悩ませています。あと、宿泊施設を僕たちが増やすことはできないので、ホテルを増やす以外に、より多くのお客さんに来ていただくにはどうしたらいいかというのも、難しい課題だと思います。

フェスという非日常のイベントを成功させるには、開催地域の交通や宿泊といったインフラなど普段の状況を把握しておく必要がありますし、やはり多方面からの協力も欠かせないのだと改めて思います。

これからの展望

最後に、今後フェス事業で挑戦してみたいことや、将来的に「こんなフェスを目指したい」と思われていることを教えてください。

祐川

僕としては、まだまだいろんなアーティストさんに新しくご出演いただきたいなと思っています。これまでも幅広いアーティストさんにご出演いただいているんですが、呼んでみたいアーティストさんが毎年増えたり、これまでお声がけし続けているけどなかなかスケジュールの都合が合わない方もいらっしゃったりするので、お客さんが「あ、この人出るんだ」と思うようなインパクトを毎年与えていきたいです。特に来年は10周年の節目でもあるので、今までご出演いただいてきたアーティストさんはもちろん、新しいアーティストさんにもパフォーマンスをしていただいて、今までで一番のアニエラフェスタにしたいなというのが僕の目標です。

コバヤシ

祐川が言ってくれたように、これまで出演が叶っていないアーティストさんにもアニエラフェスタを体験していただいて、たくさんのアーティストさんにとって、このフェスに出演したことが人生の思い出になったら嬉しいなと思います。あとは、アニメやポップカルチャーのファンの皆さんにとって、このアニエラフェスタが、正月に実家に帰るような毎年の恒例行事になったら嬉しいです。そういうイベントを、末永くつくっていけるといいなと思っています。

これからのアニエラフェスタに、ますます期待が高まりますね。コバヤシさん、祐川さん、ありがとうございました!